
「中性紙」とは、紙の製造工程において酸を含まない、pH値が中性から弱アルカリ性(pH7.5~10程度)で仕上げられた用紙のことです。中性紙は長期保存に優れ、時間が経過しても黄ばみや劣化しにくいのが特長です。
「中性紙」とは、紙の製造工程において酸を含まない、pH値が中性から弱アルカリ性(pH7.5~10程度)で仕上げられた用紙のことです。中性紙を製造する際、炭酸カルシウムなどの中性からアルカリ性の充填剤を使用することで、紙そのものが酸化しないよう工夫されています。
中性紙と酸性紙の製造上の違いを一覧にしました。

20世紀半ば頃から、酸性紙問題が発生しました。酸性紙は、硫酸バンドと併用することで紙自体が酸性となり、数十年経過すると黄変やボロボロに劣化するというものです。19世紀や20世紀初頭に作られた紙が100年も経たずに劣化が見られるようになったことで、社会問題として取り上げられるようになったのです。これにより、大量生産されていた酸性紙は、中性紙へと移行されることになっていきました。
紙は、製造方法や保存環境によってもその保存性は大きく異なります。
【紙が劣化する主な原因】
・日光
・温度変化
・湿気
・製本時の接着
・カビ
・害虫
など。
【紙の寿命】
紙の寿命は、洋紙の場合は100年、和紙であれば1000年と言われています。和紙は、1000年を超えるものでも保存状態の良い文書が多数現存しています。
原料繊維の種類が紙の寿命に影響を及ぼします。原料に繊維が長く、セルロース分が多く、リグニンが少な麻類が使われている、わが国最古の印刷物「百万塔陀羅尼経」(AD 770年)は、保存性が高いと言えます。また、洋紙の場合は、中性紙の寿命は酸性紙の3~4倍といわれます。機械パルプを原料としていて繊維の中にリグニンが多いため、空気や日光、熱や温度そして湿気などの影響で化学反応を起こしやすく保存性が悪くなってしまいます。
このほか、紙のpHも寿命に影響します。紙に含まれている酸によって、紙を構成しているセルロースが傷み、時間の経過とともに劣化が進んでしまいます。

中性紙には以下のようなメリットがあります。
〇読みやすさが維持される
〇環境にやさしい
中性紙最大のメリットは、時間が経過しても紙の劣化がしにくい点にあります。先ほども触れましたが、酸性紙は、紙の主成分であるセルロースが酸によって分解されることで、数十年で黄ばみや劣化が進みボロボロに崩れることがあります。一方で、中性紙はその劣化を抑制し、数十年から100年以上もの保存も可能とされています。特に、中性紙は以下のようなケースでそのメリットがさらに活かされます。
・契約書や登記書類などのような法的文書
・会社の歴史を残す保存版社史や報告書
・写真作品や美術品の長期保存台紙
・歴史資料や学術書などのようなアーカイブ資料
中性紙は、インクのにじみが少なくトナーの定着も良いことから、文字が鮮明に残るため読みやすさが維持されます。つまり、長期保存でも文字が読みづらくなることが少ないため、重要な情報を確実に残すことが可能です。
中性紙は、製造工程において硫酸アルミニウムなどの強酸を使用しないため、排水処理の負担が少なく環境にやさしいのもうれしいポイントです。また、中性紙には再生紙から作られた製品も多く、森林資源の節約にも一役買っています。さらに、竹や麻などの非木材繊維を原料とした中性紙も存在します。竹や麻などのように、成長の早い植物資源を活用することで、サステナブルな紙生産にも貢献しています。
このように、中性紙は「長期保存」に優れているだけでなく、「地球にもやさしい紙」と言えます。

中性紙には、用途に応じてさまざまな種類があります。ここでは、その中でも代表的な中性紙の種類とその使い道についてご紹介します。
コピー機やプリンター用紙として使用する場合、中性紙のコピー用紙がおすすめです。常時使われる資料はもちろんのこと、長期保存が必要な契約書や報告書などは中性紙のコピー用紙に印刷しておくと安心です。酸化して劣化することも少なく、文書を長期保存しておくことが可能です。
日本に古くから伝わる和紙は、元来長寿命な紙として知られていますが昨今では、中性抄造技術を取り入れた中性紙和紙が登場しています。和紙は、主に公文書の保存や修復、美術印刷、書道作品の保存用などに用いられることが多くなっていますが、これらのような用途には中性紙の和紙が最適です。和紙が持っている特有の温かみある風合いを活かしながら、中性紙の高い保存性が加わることで大切な文書を後世にまで残すことができるでしょう。
学校などで使われている画用紙やスケッチブックなども、昨今では中性紙のものが増加傾向にあります。なかでもプロの画材では、耐光性があり変色しにくい中性紙画用紙が好まれています。こうした画用紙を用いることで、作品を長く保存・展示することが可能となります。このほか、名刺やはがき、アルバムの台紙、写真プリント用紙、製図用紙などもまた保存性が重視され、中性紙が選ばれています。重要な作品を残す可能性がある場合は、中性紙でできた画用紙を選ぶことをおすすめします。
現在では、書籍や雑誌の本文用紙にも主に中性紙が使われています。図書館に保存されている本や、長期間販売される書籍には、酸化による紙の劣化を防止するために中性紙が使われています。
このように、中性紙はコピー用紙から和紙や画用紙、書籍用紙に至るまで幅広く存在し、「長期保存」が可能な紙として重宝されています。
今回は、中性紙についてご紹介しましたがいかがでしょうか。
中性紙は、製造工程において酸性の薬品を使用しないため、時間が経過してもボロボロに劣化しにくいのが特徴です。また、黄色く変色しにくく、数十年から数100年の保存が期待できます。現在市販されている多くの上質紙は「中性紙」として作られているということを覚えておくと良いでしょう。
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