
水なし印刷とは、通常オフセット印刷の印刷工程で使用する大量の水を使用しないことで、有機溶剤などを排出しない印刷手法のことです。水なし印刷は、有害な揮発性有機化合物(VOC)を放出する廃液を排出しないため、環境に配慮された印刷方法と言えます。
今回は、水あり印刷との違いやSDGsとの関係性、メリット・デメリットについてもご紹介していきます。

参照:(一般社団法人 日本WPA)
水なし印刷とは、通常オフセット印刷の印刷工程で使用する、H液*1やIPA*2などを含んだ大量の「湿し水(しめしみず)*3」と、刷版の現像工程で用いられることの多い強アルカリ性現像液を使用しないことで、有害な揮発性有機化合物(VOC)を放出する廃液を排出しない地球環境にやさしい印刷手法のことです。また、現像工程において廃液を削減することによって、自然環境はもちろん、労働環境にも配慮された技術となります。
さらに、水なし印刷を導入することで、環境保全に配慮した印刷物のシンボルマークである、「バタフライマーク(水なし印刷認証マーク)」を表示することが可能となります。このバタフライマークは、アメリカの非営利団体が開発したもので、環境問題に取り組みながらもクオリティの高い印刷物を製造している印刷会社とその印刷物に付与されるのです。
*1「H液」
H液とは、湿し水に含まれる薬品で、バクテリアのエサとなる有機物質が多く含まれます。親水性・保水性・修復力を向上し、印刷力を引き上げる役割を担っています。
*2「IPA」
IPAとは、Isopropyl Alcohol(イソプロピルアルコール)のことです。有機溶剤の一種で、湿し水にプラスすることにより親水性をさらに引き上げてくれます。IPAを加えることで、使用する湿し水の量を減らすことが可能になります。
*3「湿し水」
湿し水とは、主にオフセット印刷で使われる、版のインキを付着させない部分である非画像部を湿らせることによって、油性インキの付着を防止し、印刷品質を安定させるための専用の水溶液のことです。単なる水ではなく、水と油の反発作用を利用する印刷の基本要素となります。
水なし印刷のほか、水あり印刷という言葉もあります。
水あり印刷とは、オフセット印刷の伝統的な手法であり、印刷工程において湿し水を使用し、インキがのる部分である画線部とインキがのらない部分である非画線部に区別する印刷方法です。このような手法は、チラシや雑誌などで広く用いられています。
オフセット印刷に関する詳しい内容は、「オンデマンド印刷とは?オフセット印刷との違いについてもご紹介します!」をご覧ください。

水なし印刷のメリットは、次のようなものが挙げられます。
水なし印刷は、湿し水を使わないことから印刷物の色が安定します。湿し水を使わないことによって、にじみに起因した「ドットゲイン変調」による色の変化が解消されるのです。また、水によるインキの乳化を抑えることができ、水あり印刷よりも高精度な印刷再現性にすぐれ、高精細でしっかりとした印刷物に仕上がります。
水なし印刷は、湿し水を使用しないことや、現像工程で用いられることの多い強アルカリ性現像液を使用しないことで、有害な揮発性有機化合物(VOC)を放出する廃液を排出しないため、環境に配慮した観点からアピールすることができるというメリットがあります。このほか、水質汚染防止法の遵守、化学物質管理促進法、グリーン購入法、ISO14000シリーズの対策にも有効的です。
こうしたことから、昨今では多くの印刷会社が水なし印刷を導入しています。また、世界的な取り組みである「持続可能な開発目標」(SDGs)においても、水なし印刷を取り入れることで17の目標のうち、以下の8つに関する目標を達成することができます。
水なし印刷は、環境に配慮された印刷であるため、印刷コストが高くなると思う方も多いかと思いますが、ほとんど変わらない価格で提供されています。というのも水あり印刷は、インキだけではなく、湿し水の量や汚れ、温度などの影響が出ることで管理するために経験が必要となります。その一方で、水なし印刷はにじみに起因した色の変化が解消されるため、インキの管理に集中することができ、品質管理が容易になります。これに加えて、準備時間の短縮とスピーディーな立ち上がりを実現することで、生産性向上にも貢献しています。このほか、試し刷りの用紙も抑えることが可能なため、コスト削減につながるでしょう。
用紙の種類によっては、水を含む印刷の場合、用紙そのものが伸びることがありますが、水なし印刷では紙伸びが発生する心配がありません。というのも水なし印刷は、平滑な用紙同様に、凹凸のある用紙にも同じように印刷することが可能なためです。そのため、水なし印刷は美しい仕上がりを保証できるのです。

水なし印刷には、メリットがある一方でいくつかのデメリットもあります。
水なし印刷は、水を使用しないことで静電気が発生します。紙に静電気が発生することによって、紙同士がくっついてしまい、裏付き(ブロッキング)が発生しやすくなってしまうというデメリットがあります。
水なし印刷のインキは、水あり印刷と比較すると若干硬くなります。そのため、印刷時にインキの粘着力によって紙が引っ張られ、表面が変形・剥離する「ピッキング」という現象が起こりやすくなってしまいます。
水なし印刷は、水あり印刷と比べて、データ上に存在しない色の濃淡である通称「ゴースト」の出やすい絵柄への対処が難しくなるというデメリットもあります。このゴーストへの対処は、インキの量や湿し水の量を調節するなどがありますが、水なし印刷は湿し水を使用しないため、インキの量のみで調節しないとならないことから、可能な対策も限られてしまうのです。
今回は、水なし印刷について解説してきましたが、いかがでしょうか。
水なし印刷は、環境保護に関するメリットがたくさんありました。
この機会にぜひ、印刷方法から環境保護を意識し、今後印刷物を作成する際の選択肢のひとつとして、検討してみてはいかがでしょうか。
水なし印刷に関して、ご相談等ございましたら、大倉印刷までお問い合わせくださいませ。経験豊富なスタッフ一同、こころをこめてご対応させていただきます。
#水なし印刷 #水なし印刷メリット #水なし印刷デメリット #水あり印刷 #バタフライマーク #大倉印刷 #印刷 #製本加工 #文京区印刷製本 #印刷会社 #製本会社 #用語集
Copyright © 大倉印刷株式会社 All Rights Reserved.